医療法人社団修林会 大手町アビエスクリニック
院長 早田台史(はやた だいし)
日本外科学会専門医,日本外科学会認定医,日本救急医学会専門医,厚生労働省認定麻酔科標榜医,日本医師会認定産業医, マンモグラフィ読影試験認定医
日本消化器外科学会会員,日本消化器病学会会員,日本胸部外科学会会員,臨床救急医学会会員,日本外傷学会会員,日本消化器内視鏡学会会員,日本内視鏡外科学会会員,乳癌検診学会会員
AHA(American Heart Association: アメリカ心臓協会) ヘルスケアプロバイダー,AHA ACLSプロバイダー,JATEC プロバイダー,NPO法人TMATインストラクター, AHA BLS インストラクター,AHA ACLS インストラクター,AHA ACLS TCファカルティー,ACS(American College of Surgeon: アメリカ外科学会) ATOM プロバイダー,ACS ATOM インストラクター,AHA ACLS-EP インストラクター, AHA ACLS EP TCファカルティー
■主な出演番組 <ヒートショック関連>
<日本テレビ> 「今日の出来事」(ニュースZERO) 「世界で一番受けたい授業」「女神のマルシェ」「行列ができる法律相談所」
<テレビ朝日> 「ワイドスクランブル」 「スーパーJチャンネル」
<TBS> 「Nスタ!」 「News 23」
<フジテレビ> 「めざましテレビ」 「とくダネ!」
厚生労働省が発表している人口動態統計によると、熱中症による死亡者数は増加傾向です。年間の死亡者数は約1000名、救急搬送の件数では東京都と17政令都市だけで5000名以上の熱中症患者が搬送されています。
国立環境研究所が全国の消防局などの協力で調査したところ性別では男性が全体の約2/3を占めていました。屋外での仕事中に熱中症で搬送されたケースが多いようです。65歳以上の搬送も目立っています。とくに女性では患者数の半分以上が65歳以上です。また人口当たりの患者数では65歳以上がもっとも多くなっています。
若い人たちは屋外での仕事中や学校でスポーツをしているとき熱中症になっています。ところが65歳以上の高齢者では自宅など室内にいるとき熱中症で倒れているケースがとても多いのです。
高齢者は若い人たちよりも体内の水分量が少ないので汗をかきにくいのです。成人の身体は体重の60%が水分ですが、高齢になると50%ほどに減ってしまいます。
また加齢によって、暑さやのどの渇きに対する感覚が鈍くなるので、熱中症になりかかっていることを気づきにくいのです。 そして身体の体温調節をする機能も低下しています。また、心臓や腎臓に病気のある方も多く、熱中症が重篤化しやすいので注意しましょう。
気温が25℃を超えてくると熱中症患者が発生しはじめます。そして31℃を超えると急激に増加します。ですがこれは屋外で運動や仕事をしている人達のことです。
高齢者の場合では、室内で起こるため気温の上昇に合わせて発生率が“じわじわ”と増えてきます。夜間など防犯目的で締め切ってしまうことで風通しが悪くなることも原因となります。そして一日の大半を自宅で過ごしていると、熱中症になりかかっていることにも気づかず、対策をしないまま発症しているようです。
ただ、室内の熱中症リスクは高齢者だけでなく子どもでも同じようにあります。思春期前の子供は汗腺をはじめとした体温調節能力がまだ十分に発達していないために高齢者と同様に熱中症のリスクが高くなります。部屋の中にいるからと安心せず、注意しましょう。
汗をたくさんかく真夏に加え、夏へと季節が変化する5月から7月も注意が必要です。急に気温が上昇する日があるので、そうしたときが危険です。
人間は汗をかくことで体温調節をしています。ですが急に暑くなったときはまだ、身体が夏の準備をしていないので汗がうまく出ず、熱中症になってしまいます。
自律神経の働きで汗をかくのですが、そのためには「暑熱順化」という準備期間が必要なのです。少しずつ身体を夏の暑さに慣れさせていくわけです。スポーツ選手だと1週間ほど、一般の方は2週間以上かかります。
ですから、あまり涼しい部屋でばかり過ごさず、少し暑いかなと思うぐらいの温度で身体を夏に慣れさせていくことで汗のかける身体になります。
エアコンの温度設定は、28℃より上がらないように調節し、外に出た時の温度差が危険なため24~25℃以下などに下げすぎないように注意しましょう。
熱中症とは、熱による脱水や体内の塩分のバランスが狂うことで引き起こされ、最終的に気温が高いのに体温を調節する機能が狂ってしまうという一連の流れで起こるめまいや頭痛、けいれん、意識障害といった症状のことをいいます。ですから原因は温度と湿度が高い環境と、汗をかくための自律神経の不調が関与しています。
それを予防するには身体にこもった熱を逃がしてあげることが大切です。その対策を理解するには、体温を下げる次の4つのメカニズム (1)蒸発、(2)放散、(3)対流、(4)伝導 を知ると分かり易いです。
蒸発は、汗をかいて熱を放出し、それが蒸発する気化熱を利用して体温を調節することです。そのためには夏前から時間をかけて暑さに慣れて、適度に汗をかける身体をつくっておくことが大切です。それからこまめに水分補給するようにしましょう。
放散は血の手足への血のめぐりをよくして体温を逃がすことです。暑くなると血管が広がり、血流が良くなりますが、気温が体温以上になるとこの放散ができなくなってしまいます。そのためエアコンを使うなどして室温を調整することが大切です。高齢者のなかには、暑さを我慢するのが良いことだと思っている方がいます。節電などといって、エアコンをなるべく使わずに過ごそうとしますが、直射日光にあたっていなくても室温が高くなると身体は熱を放散しにくくなるので熱中症のリスクが高まります。
対流は風にあたることです。扇風機も活用して空気を循環させてください。気温が高くても風があたると涼しくなるのはこのためです。
それから伝導は冷たいものに触れることです。シャワーを浴びたり、冷たい濡れタオルで身体を拭いたりすることがそれにあたります。また5-15℃ほどに冷やしたドリンクを飲むことも効果的です。ただし麦茶をのぞくお茶類やアイスコーヒー、それからビールなどの酒類には利尿作用があるので熱中症対策としては不向きです。脱水によって、汗をかきにくくなるからです。
お風呂に入るときは注意しましょう。気温も湿度も高い状態ですからのぼせて熱中症になりやすいです。それを予防するためには、まず浴室は換気をしましょう。窓があるなら開けておきます。サウナのようにせず、浴室内の室温と湿度を下げるようにします。それから入浴前にはコップ一杯の水分補給をしておきます。これは汗をかくための準備です 。
また西向きのお部屋や2階など、室温が高くなりやすい場所は要注意です。カーテンやすだれで日差しを遮ったり、部屋の見やすい場所に室温計をおいて、温度が上がってきたらエアコンをつけるようにしましょう。
環境省では次のようなことを熱中症対策として注意喚起しています。参考にして下さい。
■環境省熱中症予防情報サイト http://www.wbgt.env.go.jp/heatstroke.php